当事者が通謀して得た判決の効力

こんにちは。ひだまり法律事務所弁護士の三谷です。

 

当事務所でも、訴訟・裁判事案について数多くの実績を有しております。本日は、その裁判に関するコラムを執筆してみました。

 

両当事者が通謀して、裁判所をだまして獲得した判決でも有効かどうか

 

今回はそのような事例を検討してみましょう。   

今回の話題とした事例は、2019年(令和元年)8月9日午前6時発信の産経ニュース「大阪・枚方の寺院、墓地経営の許可狙い裁判所欺く?「隣接地の所有者の了承https://www.sankei.com/west/news/190809/wst1908090005-n1.htmlによります。   

(1)

 

寺院(X)と不動産会社(Y)の争いです。X寺院とY会社は、墓地の共同経営を計画していたのですが、そのためには、X地とそれに隣接するY地とを新たに合筆したのではだめで、もともとX寺院の境内地でなければ、墓地はできない、というのです。そこで、X寺院とY会社は通謀して、X寺院がY会社を被告に、X地に隣接するY地は、もともとX寺院の境内地であった、ということで、X寺院が原告となり、Y会社を被告として「登記の誤りを理由とした所有権の移転」登記請求訴訟を提起したのです(以下、第1訴訟といいます。)。

 

この第1訴訟においては、記事によれば、Y会社は「一切争わず、地裁は・・・隣接地を境内地と認める判決を言い渡した」というのであり、おそらくY会社は控訴せず、そのまま判決が確定したと思われます。

 

ここに「一切争わ」なかったということは、Y会社が出席しなかった(民事訴訟法159条3項本文)か、出席しても、X寺院の「主張した事実を争うことを明らかにしな」かった(民事訴訟法159条1項本文)ことによる擬制自白の結果だと思われます。判決が言い渡されていますので、いわゆる請求の認諾ではありません。請求の認諾であれば、判決は言い渡されず、認諾した旨が調書に記載されれば(民事訴訟規則67条1項1号)、当然に訴訟は終了します(民事訴訟法267条参照)。

 

このように当事者が争わないで一致している事実については、裁判所は詮索・関与せず、判決の基礎となる事実としてそのまま認定します。弁論主義といわれるものです。

 

そして、このような実質的な事実審理を経ないで言い渡された判決も、上訴や再審で取り消されない限り、有効なのです。有効な判決であり、第1訴訟は上訴されずに確定したのですから、その確定判決には既判力が認められています。このことは、次に議論する論点になります。

 

(2)

 

 ところで、弁論主義が民事訴訟では採用されていることから、奇妙な判決や和解が成立することもあります。

次のケースは、金融会社AのB社長は、1995年から1998年までの間に別の金融業者から買い取った多重債務者リストからCの氏名や住所を抜き出し、Cを借り手とする金銭借用証書を偽造したうえで、この借用証書を証拠に訴訟を提起しました。

 

そして、Cは、身に覚えはなかったが、中小企業に勤めており、弁護士費用を払ってまで争う時間はないと考え、200万円の請求に対して訴訟中の和解での解決に応じ、150万円を支払いました。

 

ニセの借用書を作って裁判官をだまし、貸金返還を命じる判決を引き出そうとしたとして、詐欺未遂と有印私文書偽造・同行使の罪に問われたB社長の判決があり、裁判長は「正義が行われるべき裁判所を舞台に犯罪を行っており、訴訟詐欺の中でも前例を見ないほど悪質だ」と述べて、B社長に懲役7年6カ月(求刑懲役8年)を言い渡しました。(http://www.asahi.com/「裁判所舞台に訴訟詐欺、金融会社元社長に7年6カ月判決」参照)。  

さて、身に覚えがないにもかかわらず、Cが支払った金員は、取り戻すことができるでしょうか?是非考えてみてくださいね。

 

〔文責: 三谷忠之〕

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