民事訴訟法講義案の疑問点①

こんにちは。八王子のひだまり法律事務所の弁護士の三谷です。
 法科大学院の学生が教科書として使用していることの多い「民事訴訟法講義案 再訂補訂版」(司法協会)の記述について、民事訴訟法を専攻する者として疑問に思う点を指摘したいと思います。
1 氏名冒用訴訟について
  「原告側の氏名冒用の場合であれば、代理権欠缺の場合に準じて、訴えを却下すべきである」(P41 L16)、「被冒用者は、訴訟行為をするのに必要な授権の欠缺があった場合に準じ、・・・判決確定後は再審の訴え(法338条1項3号)をもって、判決の取消しを求めなければならない。」(同L23)と記述されています。
  前者は「代理権欠缺」であり、後者は「授権の欠缺」です。これらは、いずれも民事訴訟法338条1項3号に規定されているものですが、再審期間に違いがあります(民事訴訟法342条3項)。どちらの欠缺に準じるかでこの結論に大きな違いが生じますが、いずれの欠缺と捉えるべきなのでしょうか。
2 訴訟能力の欠如
  「訴えの提起について原告の訴訟能力が欠缺することが提訴当時に判明したときは、訴えを提起した原告に対し補正を命ずる(法34条1項本文)。補正期間を経過したときは口頭弁論を経ずに訴えを却下することができる(法140条)。この場合、訴訟能力を補正して再度訴えを提起することは妨げられない。
 訴状の記載自体から被告が訴訟無能力者であることが判明したときは、訴状の必要的記載事項(法133条2項1号)の法定代理人の記載の欠缺として、原告に対し、補正命令(法137条1項)を発する。原告は、法定代理人を調査したり、必要に応じて特別代理人の選任を申し立てて(法35条)、訴状記載の不備を補正する。補正期間内に原告が補正をしなかったときは、裁判長は訴状却下命令を発して終局する(法137条2項)。」(P46ウ(ア))との記述があります。
  原告側に訴訟能力がない場合は訴えの却下となり、被告側にない場合は訴状却下命令になる違いはなぜ生じるのでしょうか。

 みなさま是非ご検討下さい。(1につき拙著「民事訴訟法講義 第3版」(成文堂)P363,2につき同P28を参照してみてください。)
 本日は、これまでにします。

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