民事訴訟法講義案の疑問点②

こんにちは。八王子のひだまり法律事務所の弁護士の三谷です。
 今回も引き続き「民事訴訟法講義案 再訂補訂版」(司法協会)の疑問に思う点を指摘してききます。
1 証書真否確定の訴え(法134条)について
  証書真否確定の訴えについて「法律関係を証する書面(例えば,遺言書,定款など)が作成名義人の意思に基づいて作成されたものかどうかの事実の確認を求める訴え」と記載されています(P53末行)。
  この訴訟について判例(最判昭和27・11・20民集6巻10号1004頁)では,「民訴法225条(※引用者注 旧法の条文。現行法134条)に定めている書面の真否を確定するための確認の訴は,書面の成立が真正であるか,否か,換言すればある書面がその作成者と主張せられるものにより作成せられたものであるか或はその作成名義を偽わられて作成せられたものであるか,すなわち偽造又は変造であるかを確定する訴訟である」と定義しています。ここにいう「作成者と主張せられるもの」と「作成名義人」は同じでしょうか。
2 公示送達と上訴の追完
  「しかし他方,相手方の瑕疵ないし不実の公示送達申立てにより確定判決があった場合は再審事由にあたらないと解されること(大判大10.5.4民録865,大判昭10.12.26民集14-2129,最一小判昭57.5.27判時1052-66)も考慮に容れなければならない。判例には,上訴の追完を認めるものがある(最二小判昭和36.5.26民集15-5-1425[62],最二小判昭和42.2.24民集21-1-209[10])。この場合,法97条1項にいう「責めに帰することができない事由」をある程度限定的に解釈適用することが必要となろう」(P113(オ)本文L7)との記述があります。
 引用判例の当時には,公示送達の許可は裁判長の権限でした(旧民訴法178条1項)。しかし,その権限は現在では,裁判所書記官にあります(民訴法111条)。裁判所書記官の処分でよいとする現行法において,裁判長の許可を要した旧法時代の判例を先例として単純に援用して議論してもよいのでしょうか。

 拙著「民事訴訟法講義 第3版」(成文堂)を参照して(1につきP174,2につきP138),各自考えてみてください。
 続きはまた後ほど。

TOP