民事訴訟法講義案の疑問点③

こんにちは。八王子のひだまり法律事務所の弁護士の三谷です。
 今回も引き続き「民事訴訟法講義案 再訂補訂版」(司法協会)の疑問に思う点を指摘します。
1 審級管轄について
  「審級管轄は自動的に定まっていて、管轄違いの裁判所への上訴によって移審の効力は生じないし、移送を認めると判決の確定時期を不明確ならしめるとして本条の適用を否定する見解もあるが、判例(大決昭8.4.14民集12-629、最判昭25.11.17民集4-11-603、最決昭23.5.13民集2-5-112)は肯定している。」(P35L4)
この叙述における本条とは、民事訴訟法16条のことですが、上訴の場合の上訴状提出先は、不服の対象である裁判をした裁判所(条文では、「原裁判所」)です。したがって、「管轄違いの裁判所への上訴」はありえないのではないでしょうか。
2 受継申立について
  「上訴とともに直接に上訴裁判所に対し受継申立てができるかという問題につき,判例はこれを肯定している(大判昭7.12.24民集11-2376)。」(P116)
現在の民事訴訟法286条1項(民事訴訟法313条、民事訴訟法331条)によれば、上訴状の提出先は原裁判所ですから、「上訴とともに直接に上訴裁判所に」ということはありえないのではないでしょうか。
 以上につき、拙著「民事訴訟法講義 第3版」(成文堂)を参照して(P323),各自考えてみてください。

 なお、信託法は平成18年に改正されていますが、本書に反映されていません。法改正が頻繁に行われていますので、条文は常にチェックしましょう。

TOP